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2002年湯かけ祭り
「お祝いだ〜!」
ふんどし1丁の裸の男達が紅白に分かれ、木桶で運んだ湯をお互いにかけあっている。
湯気が上がる。お湯の飛沫が容赦なく飛びかかる。気がつくと、かかった飛沫が凍りついている。
2002年1月20日、早朝。北軽井沢ブルーベリーYGHから川原湯温泉の湯かけ祭り見学に来たのは10数人。ペアレントやヘルパーも含めて全員が早起きし、宿を空にして川原湯に向かったのだった。
坂の途中に建つ公衆浴場「王湯」前のステージが会場。5時過ぎに到着すると、既に神事が始まっていた。
「では、ここからは自由行動としましょう」
去年も見学に来ているペアレントが言う。私は去年、坂の下側の白組側で見学したので、今年は上側の紅組側に行く事にした。
紅組側にするか白組側にするか。つまり
「坂の上側で見るか、下側で見るか」
というのは、最初に決めて移動しなければならない。お湯のかけあいが始まったら、戦場の真ん中を突っ切るのは勇気がいる。
一連の儀式が終わると、紅白に分かれて集合する。紅組は坂の上にある、温泉神社まで駆け足。私や他の観客も、後について移動する。
「いくぞ」「おー!」
気合いとともに神社の石段を駆け下りる紅組のメンバー。その時、
「ぅわー」
早速、お湯をかけられた観客がいる。よく見るとブルーベリーから一緒に見学に来たお客さんだった。写真撮影に夢中になって、近づきすぎたらしい。
お湯のかけあいが始まった。それとともに、観客も濡れ始める。
だけど、よく見ると、人によって濡れ方に差が出ている。
あまり考えずに前に出て、まともに洗礼を浴びる人。
「ほらほら、そんな後ろじゃ写真が撮れないよ」
と言われても、身の危険を感じて前に出ない人。だけど、後ろにいるからと言って、安心はできない。
また、同じ側の最前線でも、左右どちらかに居るかによって、濡れ方が違ってくる。ステージ側にいた前田さんは、ほとんど濡れていないというのに、反対側にいた栗原さんは、びしょ濡れになっている。
「その場所のせいだよ」
「へえ、そんなん?」
と言った瞬間、お湯が飛んできて前田さんもずぶ濡れになる。見学場所というのは本質的な問題ではないらしい。
去年と今年を比較すると、今年の方が観客の濡れ方が大人しい。気のせいかもしれないが、去年の方が、もっと派手に観客にかけていたように思う。
そう言えば、今年の方が観客の数が多い。日曜日の朝という、曜日の良さもあるんだろう。
ひょっとすると、今年はお湯をかけられて怒り出す観客がいて、自粛していたのかもしれない。それでは祭りの楽しさが半減してしまうんだけど。
祭りはクライマックスへ。紅白2つのくす玉が、お湯で割られる。中から鶏が1羽ずつ出てくる。それを手にした紅白それぞれのリーダーがステージに上がり、鶏を奉納する。 湯かけ祭りでは、先に鶏を奉納した方が勝ちとされる。今年は、どちらが勝ったのだろう? 歓声の渦に声が消され、分からなかった。
それにしても、何度来ても楽しい祭りだ。
「来年も、家族を連れて来ます」
それだけの価値はあると思う。
八ツ場ダム建設によって、川原湯温泉が水没するまでの数年間、できたら休暇を取ってでも来てみたいものだ。
【土井健次】
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